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純銀製オリジナルライターの出来るまで:その2 「手作業による銀製品加工!」

純銀製オリジナルライターの出来るまで:その2 「手作業による銀製品加工!」

hallelujah_02_00.jpg

前回に引続き、ハレルヤ銀器工芸さんにお邪魔した際のレポートを掲載させていただきます。

当日はお忙しい中こちらから無理行ってお伺いしたにも関わらず、ライターの製作工程の詳細をご説明していただきました。
製作工程を公開してしまう事自体が知識の流出に繋がってしまうのでは・・・と懸念していたのですが、地濃さんはご丁寧に、そして分りやすく私たちにその手法をお話くださいました。

※各工程毎に記載されている写真は、クリックする事で拡大します。

【工程1:素材の準備と加工】

まずは素材の加工準備工程。
地金(じがね)と呼ぶ、銀の板から切り出す作業から始まります。

hallelujah_02_01.jpg地金(じがね)

hallelujah_02_02.jpg切り出し後1

hallelujah_02_03.jpg切り出し後2

  1. ライターのサイズにあわせて、地金から素材を切り出す
  2. 切り出した地金をバーナーであぶる(焼き「なまし」作業)。これによって素材が柔らかく、加工しやすくなるそうです。
  3. なました素材は、若干のしゃくれ(歪み)ができるので、金槌で叩いてこれの修正を行う。
  4. 組み合わせる為に、それぞれの板の「角が斜めになるように」ヤスリで削っていく。

まず驚いたのは角を斜めに削って・・・という点。
普通に切り出した物同士を組み合わせるよりも、こうした形で組み合わせたほうが仕上がりが美しく、頑丈になるのだとか。
反面、それぞれの削りの角度、素材の厚み、大きさなどが正確に合っていないと、綺麗に組みあがらないので0.1mmレベルでの正確さが問われるとの事。
既にとても大変そうな作業です・・・。

【工程2:部品の組み合わせ1】

そして、切り出し、加工した素材を組み合わせる工程。

hallelujah_02_04.jpg仮止め
hallelujah_02_05.jpgろう付作業
hallelujah_02_08.jpg歪みを直す
hallelujah_02_07.jpg薬剤を落とす
hallelujah_02_09.jpg確認作業

  1. 前工程で加工を行った4面分の板を組み合わせていく。
  2. 針金で4枚の仮組みを行ったあと、ろう付(ろうづけ)作業を行う。
    この「ろう」とは、銀よりも融点の低い合金(銀50%、真鍮50%)で出来ており、これを火であぶり、溶かし、金属同士の接合を行う。
    因みにろう付作業をするのにあたって、接合作業時に銀表面の酸化を防ぐ為に「フラックス」という薬剤を接合部付近に塗る。
  3. バーナーの600~700度前後の炎で「ろう」を溶かし、接合面に流し込む。
  4. まず2面の2枚のみの接合が完了したら、一旦仮組みを解く。そしてバーナーであぶった事によって発生するしゃくれや歪みを金槌で叩いて(※)修正し、再度4面を接合する作業に進む。

    ※叩くといっても、本当に小さい金槌で、とんとんとん・・・と丁寧に叩いてらっしゃいました。
    しゃくれの原因となる「急所」を見つけて適量の力で叩くこの作業のコツは、中々言葉では説明できないとの事。まさに「感と経験」がモノを言う作業という事でしょうか。
  5. フラックスを落とす為に希硫酸に入れて煮る。
    希硫酸に入れておくだけでも30分位で落ちるが、高温で煮る事でより早く落とす事ができるのだそうです。
  6. 再度歪みの最終確認をし、必要であれば再度修正(金槌で叩く作業)をする。

実に、ここが最も気を使い、製作段階では急所となる工程だそうです。

この段階で正確な形に組みあげないと、この後の修正は難しく(=イコール製品として成り立たなくなってしまう可能性がある)、だからこそ精密に、繰り返し修正作業を行うそうです。

長年続けてきた作業ながら、この段階で繰り返しの修正・調整が発生し思わぬ手間がかかってしまう事も有るのだとか。

【工程3:部品の組み合わせ2】

hallelujah_02_10.jpg上面、底面、ろう付前
hallelujah_02_11.jpg上面、底面、ろう付後
hallelujah_02_12.jpgヤスリがけ
hallelujah_02_13.jpg削り完了

  1. 前工程で完成したものに今度は上面と底面の銀板をろう付する。
    ちなみに、この2面の板はやや大きめに切り出してあるので、それぞれが全体からはみ出すような形で貼られます。(左写真2枚目)
  2. ろう付が完了後、はみ出ている部分を3種類のヤスリで目の粗いモノから順に削っていく。
    この作業でつなぎ目は美しく、滑らかに、(素人の私たちの目には殆ど見えなく)なります。

削りが完了すると、左写真(最下)の様な全面が密閉され、中身が空洞の直方体が完成する。
蝶番(ちょうつがい)を設置する箇所には、空気を逃がす(※)小さい穴が開いている。
(※「ろう付」の際にバナーであぶる為、膨張する空気を逃がすために開けているそうです)

取材者のとても個人的な感想ですが、
この全面の板が組み合わされ、ヤスリ掛けが終わった段階の物はとても不思議な存在感がありました。全面が密閉され、しかも中は空洞。 ただそれだけなのに、どこか不思議な魅力を感じてしまったのは、地濃さんが手間暇をかけて製作された製品だからこそ・・・だったのでしょうか。

【工程4:磨き上げ(1)】

そしていよいよ、ツヤのある美しい表面を仕上るための磨き上げ工程。

一般的に、手早くツヤのある表面を作りたい場合、銀のメッキ処理を行うという方法があります。
ですが地濃さんの「磨き上げ」と記載された銀製品にはこれを行いません
磨き上げた銀による独自の美しい風合いを出すため、それはもう物凄い手間をかけて磨き上げを行っていらっしゃいました。

hallelujah_02_14.jpgきしゃげで磨く

hallelujah_02_15.jpg炭を使用

hallelujah_02_16.jpg水に浸して磨く

  1. まずきしゃげ(きさげ)とよばれる金属の工具で表面を平らにしていく。
  2. 次に砥石(といし)できしゃげでできた傷を磨く作業。1つのライターで30分~40分かけて丁寧に磨き上げる。
  3. 更になんと炭で磨く。この炭はいわゆる木の炭。特にきめの細かい木炭を使用するとの事ですが、ご想像がつくとおり、天然のやわらかい素材。
    これで銀の表面を丹念に磨くそうです。この作業にも30分~40分かかるとの事です。

お話をお伺いしたときは特にこの「炭で磨く」・・・という点がとても印象的でした。
(取材内容を録音したレコーダー銀をあとで聞いていた所、「木の炭で・・・銀を・・・炭で・・・」と取材者の呟きが・・・)

この段階で磨き上げ作業は一旦終了ですが、次の蝶番取り付けの後にも更に磨き仕上げがあります)

【工程5:蓋部分のカット】

hallelujah_02_20.jpg電動糸鋸
hallelujah_02_18.jpg切断完了
hallelujah_02_19.jpg蝶番のくぼみも

  1. 磨き作業が完了したものは、いよいよ糸鋸切りで蓋となる部分をカットする。
    ※現在でこそ電動鋸をつかっているそうですが、昔は手持ちの糸鋸を使っていたそうです。
  2. そして、切り離され、蓋とボディに分かれた状態に。

こうしてようやくライターのケースとしての形が見えてきました。

【工程6:磨き上げ(2 仕上げ)】

hallelujah_02_21.jpgもう一度炭で磨く

hallelujah_02_17.jpgこちらが人工砥石

蝶番の取り付けが完了したら、再度、表面の磨き仕上作業を行います。
※切断から蝶番を付ける作業で、細かい傷がついてしまうので、この段階で再度行う必要があるそうです。

  1. まずは先ほど同様、木炭での磨き上げを行い・・・
  2. そして人工砥石(じんこうといし)と呼ばれるより目の細かい素材で仕上げを行う。
    石・・・というよりもう消しゴムのように見えました。
    やはりこれも30分~40分かかるという。
  3. 最後にバフと呼ばれる布製の専用機材で磨く。人工砥石までの作業を丁寧にやっておかないと、バフをかけても美しい輝きが出ないとの事。つまり手間を決して減らせないという事です。

前工程のヤスリ掛け~磨きを含めると3時間以上を一つのライターの「削り」と「磨き」に費やすそうです。
本当に予想以上に手間のかかる作業。

「ここは地味な作業ですから、お見せするほどでは・・・」と笑顔で仰っていた地濃さん。
とんでもない!地味ながら手間のかかる事を長年続けてきてた凄みを感じる一言でした。

【蝶番(ちょうつがい)の取り付け⇒完成】

hallelujah_02_22.jpg完成!

こここれに蝶番(ちょうつがい)をハンダ付けして完了。

・・・と、以上でかなり省略しつつも、加工作業のほぼ全工程が完了。

取材の日には、工程毎に作業が途中のものをご用意してくださったのですが、実際には幾つかの量を同時進行して進めるのだそうです。
それでも1週間に5個出来るかどうか・・・というほど手間のかかる作業。

相応の時間と手間をかけ、製作の効率を引き換えにして実現する品質。そういった地濃さんのこだわりが篭っているからこそ、手にしたとき並々ならぬ存在感が感じられるのかもしれません。


次回!更に続きます・・・!

次回は、槌目(つちめ)、茣蓙目(ござめ)、岩石といった加工方法のご紹介。 また、ハレルヤ銀器工芸さんがこれまでに携わった製品などのご紹介と、kagayaでお取り扱いしている、ハレルヤ製、銀ライター、その他喫煙関連グッズのご案内をさせていただきたいと思います。

お楽しみに!
※2010-04-18 弊店の社内事情により第3回の公開が大幅に遅れております。関係者の皆様および、楽しみにしていただいている皆様へ深くお詫び申し上げます。


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2009/11/23 | Comments (1) |

コメント

Yohei Matsuda さんのコメント

ライターについては、安価なものしか使ったことがなく、ハンドメイドの逸品を手にしたいものです。

単に着火するだけのものですが、よいライターで、良い煙草を吸う、醍醐味をを味わいたいものです。

いつか、手に入れたいものです。 

2010/03/07

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